花井さんの恩返し
「マガル君、ちょっとばあちゃんの話聞いてよ。」
「ん、どうしたの?」
「今日ね昼間に病院行ってきたの。そしたら、ほら、あの畑の向かいに住んでる人なんて言ったっけ。」
「河合さんのこと?」
「あぁそうそう!その花井さんがね。」
「ばあちゃん、河合さんだよ!花井さんは川の向こうに住んでる人でしょ。」
「あ、河合さんって言ったの?その河合さんがね、病院でずーっとカバンの中漁ってたの。で、どうしたの?って聞いたら、マスクを持ってきたはずが無くしちゃったみたいなの。」
「この時期に病院でマスクないのは、いくら田舎でも怖いよね。」
「でしょ?だからばあちゃん、カバンの中に使ってないマスクあったから花井さんにそれあげたの。」
「河合さんにあげたんだね。喜んでたんじゃない?」
「うん、すごく喜んでくれてたんだけどね。さっきばあちゃんが家に帰ってきた後に、花井さんが訪ねてきたの。」
「河合さんわざわざお礼言いに来たの?」
「うん、そうだった。さっきはありがとうって言いながらマスク30枚も貰っちゃった。それとほら、これ。パンも貰っちゃった。」
「河合さん優しいね。昔話みたいな話だね。」
「ばあちゃんもそう思ったの。鶴の恩返しもこんな話じゃなかったかなーって。これはあれだね、花井さんの恩返しだね。」
「ばあちゃん、花井さんは一回も登場してないからね。花井さんがパン持ってきたらちゃんと不審に思わなきゃダメだからね。」
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