母親観察日記
昨日の分の小説風日記。
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母が大きなケーキを買ってきた。
パッケージには『特大サイズ800グラム!』と書いてある。
母曰く食べたかったからではなく安かったから買ってきたそうだ。
夕食を終えると、母は冷蔵庫から嬉しそうにケーキを運んできた。
バケツのような容器にチョコクリームが敷き詰められ、上にはシュークリームが積み上げられている。
一目で味よりも量にこだわっているというのが伝わってくる。
これは食べるのに覚悟が必要かと思いトイレに行き戻ってくると、ケーキは半分ほどに減っていた。
母の手には大きなスプーンが握られている。
まるで手品だと母を褒めると、照れながら「スプーンが大きいからだよ!」と謙遜をしていた。
それから母は「これ以上食べると歯止めがかからなくなるから」と言いケーキを冷蔵庫に片付けてしまった。
すでに400グラムほど食べていることになるが、まだ歯止めはかかっていたらしい。
甘いものが苦手な私からすると、母はテレビで見る大食いタレントと同じような輝きを放っていた。
「おなか一杯。満足満足。」
そう言いながら食卓に戻ってきた母は手にヨーグルトを持っていた。
輝きが眩しすぎるせいか、その姿を見て思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「おなか一杯なのにまだ食べるの?」
「ヨーグルトは固形じゃないでしょ。胃に入ればさっき食べたケーキの隙間に入っていくからこっちのもんよ。」
母の言葉を聞きながら私はテトリスを思い浮かべた。
母の体ではヨーグルトが胃の底を埋めればその列はすべて消えるらしい。
私はまだ、母の生態を理解していないようだ。