すみっこのひとりごと
自席を立つと入り口のところで談笑をしている集団がいた。
何人かは壁にもたれ、また何人かはコーヒーを片手に笑いあっている。
マガルは一歩踏み出して輪の中に入ろうとするも、そのまま集団を通り過ぎてトイレに向かう。
コーヒーの香りがマスクをすり抜け、鼻の奥に残っている。
今日だけで何回この経験をしたのだろうか。
マガルは何度も会話のチャンスを窺っては、あと一歩の勇気が出せず話しかけられずにいた。
昨日の教訓を活かし人と関わろうとするも、どうにも輪への入り方が分からない。
自分が行くと周りが気を使ってしまうのではないかと考え、一言目を発することができない。
次第にマガルは自分には向いていないと悟り、自らを正当化するための言い訳を考えるようになった。
特に話したいことがあるわけじゃないし。
会話するよりも仕事進める方が優先だから。
私のことをよく知ってくれてないから、会話が合わない。
言い訳を並べるうちにマガルは、ある一つのことに気が付いた。
一体、”本当の私”とはどこにあるのだろう。