ちょっと奥さん、聞いてよ

日々の出来事を小説風に記録。社会の端っこで息をひそめる人間の物語。ここだけは自分が主役。

ねむい

脳がだんだん溶けていくような、それでいて少しずつ重みが増して実体を帯びていくような感覚だ。

手足までは伝達が行き届かず、脳だけがギリギリのところで動いている。

呼吸に合わせて毛布が微かに上下し、肌を優しくなでる。

動きはしないものの、かろうじて感覚だけは残っているようだ。

 

この状態が、気持ちいい。

いらないものがどんどん削ぎ落とされていき、自分を幸せにする感覚だけが残されている。

 

目を閉じて力を抜けば一瞬で深い眠りに落ちるだろう。

すぐに眠ることができるし、永遠に起き続けていられるような気もする。

何に縛られることもなく自分の欲で起きているこの状況は、最も自由で贅沢だと思う。

 

時折遠くで車の音が聞こえてくる。

今はその音だけが私と世界をつないでいる。

 

今日の反省も、明日の不安もすべて体から分離していき、私だけがこの空間にいる。

今、私は自由だ。

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