内気な青春 1
自身も学生時代サッカー部に所属していたことから、カドヲマガルも仕事をしながら観戦していた。
この男、小中高とサッカーを続けてきたものの大してうまくはないし、プロサッカーにも興味がない。
だがしかし、高校サッカーに関しては毎年欠かさず見ている。
それはきっと、自身の青春がどこを取っても中途半端な結末で終わっていて、高校生の全力を見ることで少しでもその後悔を昇華できると考えているからである。
マガルが暮らす土地ははっきりと言ってしまえば田舎だ。
そして田舎といえばヤンキーがつきものである。
マガルが在籍していた学校も、例に漏れずヤンキー校であった。
サボる理由がなくても皆がサボり、騒ぐ理由がなくてもとりあえず騒いでおく。とにかくどれだけ悪目立ちできるかがステータスとされている所だった。
それは部活についても同じである。
練習の時間になっても誰もグラウンドに出ることはなく、部室でタバコを吸いながら談笑をしているだけだった。
そんな中でマガルの存在は正に異質と呼べるものだった。
誰もいないグラウンドで一人黙々とボールを蹴り続けていたのだ。
来る日も来る日も、彼は欠かすことなく練習に励んでいた。
ここまでの断片的な情報だけでは、恐らくマガルは”誰よりも真面目に練習を続けていた生徒”に見えるだろう。
実際、部活の皆からはそう見えていたらしく、これが後に厄介な事件を生み出すことになる。
だが実のところ、マガルは別にサッカーがやりたかった訳ではないのだ。
彼は超が付くほどの人見知りであり、ただ単に部室にいるのが苦手だっただけなのだ。
サボって家に帰る勇気もなければ部室で皆と話をする勇気もない。
そうすると行く当てがなくなり、仕方なくグラウンドに出る他なかったのである。
そんな日々を過ごしていたが、まがいなりにも監督はいて、時たま練習試合も行われていた。
そしてある日、最後の大会を目前にして練習試合が行われたのだ。
この試合こそが、マガルの中途半端な青春を代表するものになる。
疲れたから続きは次の記事で。。。