ちょっと奥さん、聞いてよ

日々の出来事を小説風に記録。社会の端っこで息をひそめる人間の物語。ここだけは自分が主役。

個サルの一コマ

きた、ここだ。

あの人が中に切り込んでくるから、この位置から走ればちょうどパスが来るはずだ。

ほらやっぱりきた。

落ち着いてファーストタッチで切り返せばシュートレンジだ。

あれ、あ、ボールに追いつけない。

 

「すみません、届きませんでした!」

 

まただ。

さっきから何度も良いパスをもらっているのに、自分の頭で思うポジションまで体が動かない。

頭の中ではもう5点目を決めたところなのに、体はボールに追いつくことさえできずにいる。

 

あ、このパスはカットできるぞ。

ここに走りこめば奪える、一気にチャンスだ。

 

よし、予想通りのところにパスは出てたから、走りこんでいればボールが取れていたな。

あとは走りこむだけだったから、実質取れたようなものだろう。

 

あれ、おかしいな、大してボールに触っていないのに足が疲れで震えている。

芝の上でやるのが久しぶりだから、そのせいで疲れたのかな。

 

あ、ここはパスをもらうふりをしてスルーすれば、奥の味方につながるぞ。

そこからあの人がダイレクトでシュートすれば点が入るだろうな。

ゴールの匂いがする。

シュートを打つフリをしてスルーしよう。

 

「あ、すいません足が当たっちゃいました!!」

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